事業承継コンサルは税理士に相談すべき?依頼できる内容や選び方を解説
- 2026.10.02
- 税金・法律
事業承継を考え始めたものの、「誰に相談すればよいのか分からない」「税理士に相談したら、どこまでサポートしてもらえるのか」と悩んでいる経営者も多いのではないでしょうか。
事業承継は、単純に会社を後継者へ引き渡せば終わるものではありません。後継者の選定や育成、株式の移転、相続税・贈与税、会社の財務状況、取引先や従業員への対応など、さまざまな問題を同時に考える必要があります。
そのため、事業承継を円滑に進めるには、早い段階から専門家へ相談することが重要です。特に税理士は、会社の財務状況や株式、相続・贈与に関する税務を把握しているため、事業承継のコンサルティングにおいて重要な役割を担う専門家の一つです。
この記事では、事業承継における税理士のコンサルティング内容や、税理士に相談するメリット、税理士を選ぶ際のポイントについて解説します。
事業承継のコンサルティングとは?
事業承継のコンサルティングとは、経営者が会社や事業を次の経営者へ円滑に引き継ぐために、現状の整理から承継方法の検討、税務・財務上の対策、実際の引き継ぎまでをサポートすることです。
事業承継には、大きく分けて「親族内承継」「従業員承継」「M&Aによる第三者承継」の3つの方法があります。中小企業庁も、承継先によって必要な準備や支援策が異なるとしており、それぞれの状況に応じて専門家などへ相談しながら進めることを推奨しています。
例えば、子どもを後継者とする場合には、自社株をどのように移転するかが重要になります。一方、従業員へ承継する場合には株式取得資金や経営権の移転が問題になることがあります。
後継者が見つからない場合には、M&Aによって第三者へ会社を譲渡するという選択肢もあります。
このように、事業承継のコンサルティングでは、単に税金を計算するだけではなく、「誰に」「いつ」「どのような方法で」会社を引き継ぐのかを総合的に検討します。
事業承継のコンサルを税理士に依頼するメリット
事業承継について相談できる専門家には、税理士のほか、弁護士、公認会計士、中小企業診断士、金融機関、事業承継・引継ぎ支援センターなどがあります。
その中でも税理士は、特に「株式」「相続」「贈与」「税金」といった事業承継に伴う財産面の問題を検討するうえで重要な存在です。
中小企業庁も、税理士は株価の評価、生前贈与、種類株式、事業承継税制などについて、相続税・贈与税に関する助言を行う専門家として位置付けています。
自社株の評価額を確認できる
中小企業の事業承継では、経営者が保有している自社株を後継者へどう引き継ぐかが重要な問題になります。
特に非上場会社の株式は、証券取引所で価格が公開されているわけではありません。
会社の規模や利益、純資産などをもとに税務上の株価を評価する必要があり、その評価額によって贈与税や相続税の負担も変わります。
税理士に相談することで、現在の自社株がどの程度の評価額になるのかを確認し、そのうえで株式の移転方法を検討できます。
相続税・贈与税を考慮した承継計画を立てられる
事業承継では、会社だけでなく経営者個人の財産についても考えなければなりません。
例えば、経営者が自社株を大量に保有している場合、その株式が相続財産となることで、相続税の負担が大きくなる可能性があります。
そのため、
- 生前に自社株を贈与する
- 相続によって後継者へ移す
- 事業承継税制の利用を検討する
- 自社株以外の財産を他の相続人へ配分する
- 納税資金をあらかじめ準備する
など、複数の方法を比較する必要があります。
税理士であれば、会社の状況だけでなく、経営者個人の財産や相続関係も含めて税負担をシミュレーションしやすいというメリットがあります。
事業承継税制の利用を検討できる
事業承継において、税負担を考えるうえで重要な制度の一つが事業承継税制です。
法人版事業承継税制では、一定の要件を満たした中小企業の後継者が非上場株式等を贈与・相続などによって取得した場合、その株式に対応する贈与税・相続税について納税猶予を受け、一定の場合にはその税額が免除される仕組みがあります。
ただし、誰でも利用できるわけではなく、会社、先代経営者、後継者などについてさまざまな要件があります。
また、制度を利用した後にも一定の手続きが必要になるため、「税金が安くなるから」という理由だけで判断するのは適切ではありません。
税理士に相談し、自社が制度の対象となるのか、利用した場合にどのようなメリット・注意点があるのかを確認することが重要です。
税理士に依頼できる事業承継コンサルの内容
事業承継を税理士に相談する場合、具体的にはどのようなサポートを受けられるのでしょうか。
税理士事務所によって対応範囲は異なりますが、一般的には次のような業務が考えられます。
1.会社の現状分析
まず、会社の決算書や法人税申告書などを確認し、現在の経営状況を整理します。
売上や利益だけではなく、借入金、現預金、不動産、自社株の評価額などを確認することも重要です。
事業承継では「会社を引き継ぐこと」だけを考えるのではなく、現在の会社にどのような課題があるのかを整理することから始めます。
2.後継者の選定・承継方法の検討
後継者が決まっている場合でも、本当にその人へ会社を引き継ぐことが適切なのかを検討します。
例えば親族内承継であれば、
- 子どもを後継者にする
- 複数の子どものうち一人を後継者にする
- 子どもには経営を任せず第三者へのM&Aを検討する
といった選択肢があります。
税理士だけで経営者の後継者を決めるわけではありませんが、税務や財務面からそれぞれの方法を比較することは可能です。
3.自社株の評価と株式移転の設計
事業承継において特に重要なのが自社株です。
自社株の評価額が高くなっている場合、後継者への贈与や相続によって大きな税負担が発生する可能性があります。
そこで、
「今の株価はいくらなのか」
「将来株価が上昇する可能性はあるか」
「生前贈与と相続ではどちらが適しているか」
「事業承継税制を利用できるか」
などを検討します。
株式を移転するタイミングによって税負担が変わる可能性があるため、早い段階からシミュレーションしておくことが重要です。
4.事業承継計画の作成
事業承継は、一度の手続きで完了するとは限りません。
例えば、
- 1年目:後継者を決定する
- 2~3年目:後継者に経営を経験させる
- 3~5年目:株式の移転を進める
- 5年目以降:代表者を交代する
といったように、数年単位で計画を立てることもあります。
会社の状況や後継者の年齢によって適切なスケジュールは変わるため、税務・財務面を含めて計画を作成することが大切です。
5.M&Aによる事業承継のサポート
後継者が見つからない場合には、M&Aによる第三者承継も選択肢になります。
M&Aでは、譲渡価格、株式譲渡か事業譲渡か、税務上の取り扱い、会社の財務状況など、税理士の知識が必要になる場面があります。
ただし、M&Aにおける買い手探しや交渉、契約書の作成などは、FA・仲介会社や弁護士など別の専門家が担当するケースもあります。
そのため、税理士だけですべてのM&A業務を完結させるのではなく、必要に応じて他の専門家と連携してもらうことが重要です。
事業承継コンサルは税理士だけに任せればいい?
事業承継は税務だけで完結する問題ではありません。
例えば、M&Aの契約については弁護士、経営改善や事業計画については中小企業診断士、登記については司法書士など、それぞれの専門分野があります。
中小企業庁も、税理士、公認会計士、弁護士、司法書士、中小企業診断士、金融機関などが、それぞれの専門性を生かして事業承継を支援する体制を紹介しています。
したがって、重要なのは「税理士だけにすべてを任せる」という考え方ではありません。
税務や財務を担当する税理士を中心に、必要に応じて他の専門家と連携しながら事業承継を進めることが理想的です。
特に、事業承継に詳しい税理士であれば、弁護士や司法書士、M&A専門会社などとのネットワークを持っている場合があります。
事業承継コンサルを税理士に依頼するメリット
税理士に事業承継のコンサルティングを依頼するメリットは、単に税金の計算をしてもらえることだけではありません。
早い段階から税負担を予測できる
事業承継では、「後継者が決まってから株式を移す」のでは遅いケースがあります。
会社の業績が好調になると、自社株の評価額が高くなることもあります。
そのため、早い段階で株価を確認し、将来的な税負担をシミュレーションしておくことが重要です。
会社と個人の財産をまとめて考えられる
事業承継では、会社の財務状況だけでなく、経営者個人の財産も重要になります。
自社株、不動産、預貯金、生命保険などを含めて相続を考える必要があるため、相続税や贈与税に詳しい税理士へ相談するメリットは大きいでしょう。
事業承継税制などの制度を検討できる
事業承継に関連する税制には、法人版・個人版の事業承継税制などがあります。
法人版事業承継税制の特例措置は、現行制度では令和9年(2027年)12月31日までの贈与・相続等が対象とされ、特例承継計画の提出期限も令和9年9月30日までとされています。
このような期限のある制度も存在するため、事業承継を考えている場合は、早めに利用可能性を確認しておくことが大切です。
事業承継コンサルを依頼する税理士の選び方
すべての税理士が事業承継コンサルを得意としているわけではありません。
事業承継を目的として税理士を探す場合には、次のようなポイントを確認しましょう。
事業承継の実績があるか
まず確認したいのが、実際に事業承継を支援した実績です。
単に「相続税に詳しい」というだけでなく、
- 親族内承継
- 従業員承継
- 自社株対策
- 事業承継税制
- M&A
など、自社が必要としている分野の経験があるか確認するとよいでしょう。
自社株評価に詳しいか
非上場会社の事業承継では、自社株の評価が重要になります。
そのため、非上場株式の評価や株式移転について詳しい税理士を選ぶこともポイントです。
特に「自社株の相続税対策をしたい」「子どもへ株式を贈与したい」といった場合には、株式評価に強い税理士を選ぶとよいでしょう。
他の専門家と連携できるか
事業承継では、税理士だけでは対応できない問題が発生することがあります。
例えば、
「株主間のトラブルがある」
「M&A契約を確認してほしい」
「不動産の名義変更が必要」
「許認可の承継について相談したい」
といったケースです。
そのため、弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、M&A専門会社などと連携できる税理士事務所であれば、複雑な事業承継にも対応しやすくなります。
税金以外の相談にも対応してくれるか
事業承継について相談した際に、税金の話だけで終わってしまう税理士では、十分なコンサルティングを受けられない可能性があります。
例えば、
「後継者が決まっていない」
「従業員への承継を検討している」
「会社を売却するか迷っている」
「後継者を育成する必要がある」
といった段階から相談できるか確認してみましょう。
事業承継のコンサルを税理士に相談する具体的な手順
「事業承継について税理士に相談したい」と思っても、何を準備すればよいのか分からない人もいるでしょう。
初回相談では、完璧な事業承継計画を用意する必要はありません。
現在の状況を税理士へ伝え、どのような選択肢があるのかを整理するところから始めるとよいでしょう。
一般的には、次のような流れで進めます。
- 事業承継について現在の悩みを整理する
- 会社の決算書など必要資料を準備する
- 自社株や会社の財務状況を確認する
- 後継者と承継方法を検討する
- 相続税・贈与税などをシミュレーションする
- 事業承継税制などの利用可能性を確認する
- 具体的な事業承継計画を作成する
- 必要な専門家と連携しながら実行する
初回相談で税理士に伝えたいこと
最初の相談では、次のような情報を伝えると話がスムーズです。
- 現在の年齢
- 会社を何年後くらいに引き継ぎたいか
- 後継者候補がいるか
- 自社株を何%保有しているか
- 会社の売却を検討しているか
- 自社株以外にどのような財産を保有しているか
- 現在、顧問税理士がいるか
- 事業承継について特に不安に感じていること
分からないことがあっても問題ありません。
むしろ、「何から始めればよいのか分からない」という状態で相談することも、事業承継コンサルを利用する一つの方法です。
事業承継はいつから税理士に相談すべき?
事業承継の相談は、できるだけ早く始めることをおすすめします。
事業承継には、後継者の選定、育成、株式の移転、財産の整理、社内外への説明など、多くの準備が必要だからです。
特に自社株の評価額が高い会社では、株式をどのように移転するかによって税負担が大きく変わる可能性があります。
「まだ会社を引き継ぐ予定はないから」と後回しにするのではなく、まずは現在の自社株の評価額や相続税の概算を確認しておくだけでも、その後の選択肢が広がります。
中小企業庁も、事業承継について「何から始めたらよいか分からない」という段階から、税理士などの身近な専門家や公的な事業承継・引継ぎ支援センターへ相談することを案内しています。
事業承継コンサルは税理士に相談して早めに準備を
事業承継は、会社の経営だけでなく、株式や相続、贈与、税金などさまざまな問題が関係するため、直前になって準備を始めると選択肢が限られてしまう可能性があります。
税理士に事業承継のコンサルティングを依頼すれば、自社株の評価や相続税・贈与税のシミュレーション、株式の移転方法、事業承継税制の利用可能性など、税務・財務面から承継方法を検討できます。
一方で、M&Aの交渉や契約、登記、許認可などについては、税理士以外の専門家が必要になる場合もあります。
そのため、事業承継に強い税理士を中心に、必要に応じて弁護士や司法書士、M&A専門会社などとも連携することが、スムーズな事業承継につながります。
「後継者が決まっていない」「自社株の評価額が分からない」「相続税が心配」「M&Aも選択肢として考えている」といった段階でも、まずは税理士へ相談してみるとよいでしょう。
まとめ
事業承継のコンサルティングでは、後継者の選定から株式の移転、税金、財務、M&Aまで、会社の状況に応じて幅広い問題を検討する必要があります。
税理士は、特に自社株の評価、相続税・贈与税、事業承継税制などの税務面で重要な役割を担います。
ただし、事業承継は税務だけで完結するものではありません。必要に応じて弁護士や司法書士、公認会計士、中小企業診断士、M&A専門会社などと連携しながら進めることが重要です。
事業承継を成功させるためには、会社を引き継ぐ直前ではなく、できるだけ早い段階から準備を始めることが大切です。
「まだ具体的な予定は決まっていない」という段階でも、まずは事業承継に詳しい税理士へ相談し、自社にどのような選択肢があるのかを確認してみるとよいでしょう。
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