これからの税理士業界は中途採用がアツい?新卒より経験者が求められる背景と理由について
- 2026.08.17
- 税金・法律
税理士事務所や会計事務所への転職を考えている人の中には、「今から中途採用で税理士業界に入るのは遅いのではないか」「新卒採用の方が有利なのではないか」と感じている方もいるかもしれません。
しかし近年の税理士業界では、人材不足や業務の高度化、クラウド会計やAI・DXの普及などを背景に、経験者を中心とした中途採用へのニーズが高まっています。実際に、2026年1月から3月の「監査法人・税理士法人・会計事務所・その他アドバイザリー」分野では、転職希望者の登録も増加しており、会計・税務業界における転職市場は活発な動きを見せています。
特に会計事務所では、「採用後に一から育成する」だけではなく、すでに会計や税務の実務経験を持ち、早い段階で顧問先を担当できる人材への期待が大きくなっています。
ただし、これは「新卒採用が不要になった」「未経験者は採用されない」という意味ではありません。人材不足が続く会計業界では、経験者だけでは必要な人員を確保できず、若手や未経験者の採用にも力を入れる事務所が存在します。
そこで重要になるのが、自分の経験をどのように活かせるのか、そして会計事務所が現在どのような人材を求めているのかを理解することです。
この記事では、なぜ税理士業界で中途採用が注目されているのか、新卒採用と経験者採用の違い、会計事務所が中途採用者に求めるスキル、そしてこれから転職を目指す人が知っておきたいポイントについて詳しく解説します。
税理士業界では中途採用のニーズが高まっている
税理士業界では以前から、新卒採用だけでなく中途採用が重要な採用方法の一つとなっています。
その理由の一つが、会計事務所や税理士法人の人材不足です。
税務・会計の仕事は専門性が高く、短期間で誰でも即戦力になれる仕事ではありません。会計ソフトへの入力など基本的な業務から始める場合でも、会計や税務の知識を身につけ、顧問先ごとの取引内容を理解し、最終的には決算や申告、顧問先対応まで担当できるようになるには一定の時間が必要です。
そのため、すでに会計事務所で働いた経験があり、
- 会計ソフトを使用できる
- 月次処理を担当した経験がある
- 決算業務に携わったことがある
- 法人税や消費税の申告補助を経験している
- 顧問先とのやり取りを担当している
といった人材は、採用後の教育コストを抑えながら比較的早く実務に入れる可能性があります。
実際に近年の税理士事務所の採用市場では、経験者の採用競争が激しくなっているという業界側の見方もあります。
つまり、税理士業界では「若いから採用される」という新卒採用型の考え方だけではなく、「どのような実務経験を持っているか」が転職時の大きな評価材料になりやすいといえるでしょう。
なぜ新卒より経験者が求められやすいのか?
もちろん、すべての会計事務所が新卒より経験者を優先しているわけではありません。
しかし、中途採用が活発になる背景には、会計事務所特有の事情があります。
教育に時間がかかるから
会計・税務の仕事では、基本的なビジネスマナーだけでなく、専門的な知識が必要です。
新卒や未経験者の場合、入社後に、
- 簿記や会計の基礎
- 会計ソフトの操作
- 勘定科目の考え方
- 税務上の基本ルール
- 顧問先とのやり取り
などを一つずつ学んでいく必要があります。
もちろん、教育体制が整った事務所であれば、未経験者を採用して育成することも可能です。
しかし、少人数の会計事務所の場合、教育を担当する職員自身も多くの顧問先を抱えていることがあります。
そのため、「人手不足だから人を採用したいのに、教育に十分な時間を割けない」という状況になるケースも考えられます。
すでに基本的な実務経験を持つ中途採用者であれば、業務内容を理解するまでの期間を短縮しやすいため、即戦力として期待されやすくなります。
顧問先を担当できる人材が必要だから
会計事務所では、経験を積んだスタッフが複数の顧問先を担当することが一般的です。
担当者は、毎月の会計処理を確認するだけではありません。
例えば、
- 顧問先から資料を回収する
- 月次試算表を作成する
- 経営状況を確認する
- 決算の準備を進める
- 経営者からの相談に対応する
といった幅広い業務を担当します。
そのため、会計入力だけでなく、顧問先とのコミュニケーションや決算業務まで経験している人材は、特に評価されやすいでしょう。
実際の会計事務所の採用でも、業界未経験者への教育を行う一方、経験者には知識や経験に応じた即戦力としての活躍を期待する求人が見られます。
人材を「採用するだけ」では解決できないから
人手不足への対応として、単純に新しい人材を増やせば問題が解決するわけではありません。
経験者が不足している場合、新しく入社した未経験者を教育する人材も必要になります。
つまり、組織として成長するためには、
「未経験者を採用する」
「経験者を採用して現場を支える」
という両方の採用が必要になります。
特に即戦力となる経験者を採用できれば、既存スタッフの業務負担を減らし、新人教育やより高度な業務に時間を使いやすくなります。
このような理由から、中途採用者は単なる「欠員補充」ではなく、組織の成長を支える重要な人材として採用されるケースがあります。
税理士業界では「何歳か」より「何ができるか」が重要になりやすい
一般企業の転職では、年齢が採用に影響するケースもあります。
一方、会計・税務業界では、専門的な実務経験を持っていることが強みになりやすいという特徴があります。
例えば、
「30代で会計事務所経験5年」
「法人顧問を20社担当した経験がある」
「法人税・消費税の申告業務を経験している」
「相続税申告の経験がある」
といった具体的な経験があれば、転職先でもそのスキルを活かせる可能性があります。
特に税理士資格を取得していない場合でも、会計事務所での実務経験が豊富であれば、税務スタッフや会計スタッフとして高く評価されることがあります。
中途採用では、単に「会計事務所で働いたことがあるか」ではなく、「どのような業務を、どの程度のレベルまで担当できるか」が重要です。
そのため、転職活動を行う際には、前職の勤務年数だけではなく、担当していた具体的な業務を整理しておく必要があります。
中途採用で評価されやすい経験・スキルとは?
会計事務所の中途採用では、経験年数だけが評価されるわけではありません。
勤務先によって求める人材は異なりますが、一般的には次のような経験が強みになりやすいでしょう。
月次業務から決算まで一連の流れを理解している
会計入力だけを経験している人よりも、月次処理から決算までの流れを理解している人材は、担当できる業務の幅が広がります。
例えば、
- 会計資料の確認
- 月次試算表の作成
- 決算整理
- 決算書の作成補助
- 税務申告書の作成補助
などを経験している場合、転職先でも比較的早い段階で実務を任せてもらえる可能性があります。
顧問先を担当した経験がある
会計事務所では、専門知識だけでなく顧客対応能力も重要です。
顧問先を担当した経験がある人は、
- 資料の依頼
- 取引内容の確認
- 電話やメールでの対応
- 月次報告
- 経営者との打ち合わせ
などを経験しています。
こうした経験は、会計ソフトの操作だけでは身につきません。
税務や会計の知識を、顧問先に分かりやすく伝える能力も、経験者採用で評価されるポイントになるでしょう。
特定の専門分野を持っている
会計事務所の中には、特定の分野に強みを持つ事務所もあります。
例えば、
- 相続税・資産税
- 医療法人
- 建設業
- IT企業・スタートアップ
- 国際税務
- 事業承継
- M&A
などです。
一般的な法人顧問業務に加えて、こうした専門分野の経験があれば、転職先の選択肢が広がる可能性があります。
今後は、単に「会計事務所経験者」というだけではなく、「何に強い人材なのか」がキャリア上の差別化につながる場面も増えていくでしょう。
AI・DXの普及も中途採用ニーズに影響している
税理士業界では、クラウド会計、電子申告、データ連携、AIなどを活用した業務効率化が進んでいます。
その結果、会計事務所が求める人材像も少しずつ変化しています。
以前は、領収書や請求書を確認し、会計ソフトへ入力する業務に多くの時間が使われていました。
しかし、データ連携や自動仕訳などの仕組みが普及することで、定型的な入力業務を効率化し、スタッフが顧問先対応や経営支援に時間を使う方向へ変化する事務所もあります。
税理士法人がDX人材を採用する背景には、電子申告やクラウド化、生成AIの普及に加え、顧問先の人手不足や経営支援ニーズの高まりなどがあるとされています。
このような環境では、
- クラウド会計を使った業務経験
- 業務フローの改善経験
- ITツールへの適応力
- AIを活用するスキル
- データを分析して提案する力
なども、今後さらに重要になると考えられます。
これからは「税務経験+α」を持つ人材が強くなる
中途採用市場で長期的に価値を高めていくためには、会計・税務の基本スキルに加えて、自分なりの強みを持つことが重要です。
例えば、
「法人税務に加えて資金調達にも詳しい」
「相続税の実務経験がある」
「クラウド会計の導入支援ができる」
「顧問先への経営コンサルティングを担当できる」
といった専門性があれば、他の応募者との差別化につながります。
税理士法人の採用においても、AIやDXの活用を含め、会計・税務の現場を理解しながら業務改善や顧問先支援につなげられる人材への期待が高まっています。
これからの税理士業界では、単純な会計処理だけでなく、
「数字を分析する」
「経営者に説明する」
「業務を改善する」
「専門的な課題を解決する」
といった能力を持つ人材の価値が高まりやすいでしょう。
新卒採用の価値がなくなったわけではない
ここまで経験者採用のメリットを中心に紹介しましたが、新卒採用の重要性がなくなったわけではありません。
むしろ、長期的な組織づくりを考えれば、新卒や若手人材を育成することは重要です。
新卒者には、特定の会計事務所の業務フローや顧問先対応の方法を一から身につけてもらえるというメリットがあります。
また、税理士試験の勉強を続けている学生や、簿記・会計の知識を持つ若手人材は、将来的な戦力として期待できます。
一方で、経験者だけを採用し続けることにも限界があります。
経験者の採用競争が激しい環境では、会計事務所側も未経験者や若手人材の育成に取り組む必要があります。業界の採用課題として、経験者採用だけに依存せず、若手・未経験層を戦略的に採用・育成する重要性も指摘されています。
つまり、今後の税理士業界では、
- 新卒・未経験者を育成する採用
- 即戦力となる経験者を採用する中途採用
の両方が必要になると考えられます。
その中でも中途採用は、事務所が不足しているスキルや人員を補う手段として、引き続き重要な役割を持つでしょう。
未経験から中途採用で税理士業界に入ることはできる?
「中途採用=経験者採用」と考える方もいるかもしれません。
しかし、中途採用には、異業種から転職する未経験者も含まれます。
実際に会計事務所の求人では、未経験者歓迎の求人も見られます。経験者を即戦力として求めながら、未経験者には研修や先輩職員によるサポートを用意している事務所もあります。
未経験から転職する場合は、会計事務所経験がないため、次のような要素が評価されやすくなります。
- 日商簿記など会計の基礎知識
- 一般企業での経理経験
- 金融機関での勤務経験
- 営業や顧客対応の経験
- ITや業務改善に関するスキル
- 税理士試験への挑戦
例えば、一般企業で経理を担当していた場合、会計事務所の実務経験がなくても、会計知識や決算に関する経験を活かせる可能性があります。
また、営業経験がある人は、顧問先とのコミュニケーション能力をアピールできるでしょう。
大切なのは、「未経験だから何もアピールできない」と考えるのではなく、これまでの経験の中から、会計事務所の仕事に活かせるスキルを整理することです。
中途採用で会計事務所へ転職するときの注意点
中途採用のニーズがあるからといって、どの会計事務所でも希望どおりの転職ができるわけではありません。
転職先を探す際には、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
「経験者歓迎」の内容を具体的に確認する
求人票に「経験者歓迎」と書かれていても、求められるレベルは事務所によって異なります。
例えば、
- 会計事務所経験1年以上
- 法人決算を担当できる人
- 税務申告書を作成できる人
- 顧問先を一人で担当できる人
では、求められる経験が大きく異なります。
応募する際には、自分の経験が求人の求めるレベルと一致しているかを確認しましょう。
「即戦力」の意味を確認する
即戦力採用の場合、入社後すぐに顧問先を担当するケースもあります。
経験を活かして早く活躍できるというメリットがある一方、十分な引き継ぎや教育がないまま、多くの業務を任される可能性もあります。
面接では、
「入社後、最初に担当する業務は何か」
「担当件数はどの程度か」
「既存担当者からの引き継ぎ期間はあるか」
といった点を確認しておくと安心です。
給与だけで転職先を選ばない
経験者採用では、未経験者採用より給与が高く設定されることがあります。
しかし、高い給与には、それだけの業務量や責任が伴うケースもあります。
また、短期的な給与だけではなく、
- どのような経験を積めるか
- 担当業務の幅は広がるか
- 専門分野を身につけられるか
- 将来的なキャリアアップが可能か
といった点も重要です。
中途採用では、「今までの経験を活かすこと」と同時に、「次の転職でさらに価値を高められる経験を積めるか」という視点も必要になります。
これからの中途採用で選ばれる人材になるために
税理士業界で長く働き、キャリアアップしていくためには、転職活動を始める前から自分の市場価値を高めていくことが重要です。
まずは、現在担当している業務を整理しましょう。
例えば、
- 何社の顧問先を担当しているか
- どの規模の会社を担当したか
- 月次処理から決算まで対応できるか
- どの税務申告に関わったか
- 顧問先との面談経験があるか
といった内容を整理すると、自分の経験を具体的に説明しやすくなります。
また、今後のキャリアを考えるなら、現在の経験に新しいスキルを掛け合わせることも重要です。
法人税務を経験している人であれば、資金調達や経営計画の知識を身につけることで、より付加価値の高い人材を目指せるでしょう。
クラウド会計やAIに興味がある場合には、実際の業務で活用し、業務効率化の経験を積むことも一つの方法です。
税理士業界でも、業務のデジタル化や顧問先への経営支援の重要性が高まる中、従来の会計処理だけではないスキルが求められる場面が増えています。
まとめ
税理士業界では、人材不足や業務の専門性、DX・AIによる業務変化などを背景として、中途採用の重要性が高まっています。
特に、会計事務所での実務経験を持ち、
- 月次業務や決算を担当できる
- 税務申告の経験がある
- 顧問先とのやり取りができる
- 特定の専門分野に強みがある
といった人材は、即戦力として期待されやすいでしょう。
ただし、これからの採用市場は「新卒か中途か」「経験者か未経験者か」という単純な比較だけではありません。
経験者には即戦力としての活躍が期待される一方、将来的な人材育成のために若手や未経験者を採用する事務所もあります。
そのため、中途採用で税理士業界を目指す場合には、「会計事務所経験があるかどうか」だけを気にする必要はありません。
自分がこれまでどのような経験を積み、その経験を税理士業界でどのように活かせるのかを明確にすることが、転職成功への第一歩です。
これからの税理士業界では、会計・税務の知識に加え、ITやAIを活用する力、顧問先とコミュニケーションを取る力、数字を経営支援につなげる力など、幅広いスキルを持つ人材の価値が高まっていくでしょう。
中途採用市場が活発な今だからこそ、これまでの経験を整理し、自分が目指したい税理士業界でのキャリアに合った会計事務所を選ぶことが重要です。
-
前の記事
会計事務所の求人探しで成功するケース・失敗するケースとは?転職を後悔しないためのポイントを解説 2026.08.10
-
次の記事
世の中に数多くある相続専門税理士を探すなら、不動産に強い事務所を! 2026.08.24