事業承継やM&Aを税理士に相談するメリットと注意点について
- 2026.09.01
- 税金・法律
会社を経営していると、後継者への事業承継や、第三者への会社売却、M&Aを検討する場面が訪れることがあります。
しかし、事業承継やM&Aは単純に会社や株式を譲り渡せば終わるものではありません。株式や事業の評価、税金、財務状況、契約、従業員への対応など、さまざまな問題を整理しながら進める必要があります。
そこで重要になるのが、税務や会計の専門家である税理士への相談です。
税理士に相談すれば、事業承継やM&Aにともなって発生する税金について確認できるだけでなく、会社の財務状況を整理したり、承継後の経営を見据えた準備を進めたりすることにもつながります。
一方で、すべての税理士が事業承継やM&Aを得意としているわけではありません。依頼する税理士を選ぶ際には、専門分野やこれまでの実績を確認することが重要です。
ここでは、事業承継やM&Aを税理士に相談するメリットと注意点について詳しく解説します。
事業承継とM&Aは税理士に相談できる
事業承継とは、会社の経営を後継者へ引き継ぐことです。
親族や役員、従業員などへ引き継ぐケースがあるほか、会社を第三者へ売却するM&Aによって事業を承継する方法もあります。
どの方法を選ぶ場合でも、税金や会計の問題が関係してきます。
例えば、株式を後継者へ引き継ぐ場合には、株式の評価や贈与税・相続税などについて検討しなければならないことがあります。
一方、M&Aによって会社を売却する場合には、株式を売却するのか、会社の事業そのものを譲渡するのかによって税務上の取り扱いが変わる場合があります。
このような問題について、税理士から税務・会計面のアドバイスを受けることができます。
事業承継やM&Aを税理士に相談するメリット
では、具体的に税理士へ相談することでどのようなメリットがあるのでしょうか。
税金の負担を事前に把握できる
事業承継やM&Aでは、取引の方法や財産の移転方法によって税金の取り扱いが変わることがあります。
例えば、親族へ会社を引き継ぐ場合には、株式の贈与や相続にともなって税金が発生する可能性があります。
M&Aでも、株式譲渡や事業譲渡など、どのような方法を採用するかによって税務上の取り扱いが異なります。
事前に税理士へ相談しておけば、「実際に承継した後にどの程度の税負担が発生する可能性があるのか」を確認しながら計画を立てることができます。
税金について何も確認しないまま話を進めると、最終段階になって想定外の税負担が判明する可能性もあります。
そのため、できるだけ早い段階から税務面を確認しておくことが大切です。
自社株式の評価について相談できる
中小企業の事業承継では、自社株式の評価が重要なポイントになることがあります。
特にオーナー企業では、経営者が会社の株式を保有しているケースが多く、その株式を後継者へどのように引き継ぐかを考える必要があります。
株式の評価額によっては、贈与や相続の際の税負担にも影響する可能性があります。
税理士に相談することで、会社の財務状況などを踏まえながら株式の評価について検討できます。
また、M&Aで会社を売却する場合にも、自社の企業価値を把握しておくことは重要です。
ただし、税務上の株式評価とM&Aにおける売買価格は必ずしも同じものではありません。
M&Aの売却価格については、税理士だけでなく、M&Aアドバイザーなどの専門家にも相談しながら判断することが大切です。
会社の財務状況を整理できる
M&Aや事業承継を進める際には、会社の財務状況を整理しておくことも重要です。
例えば、
- 売上や利益の推移
- 借入金の状況
- 会社が保有する資産
- 役員貸付金・役員借入金
- 未回収の売掛金
- 不要な資産や契約
などを確認します。
税理士は日頃から会社の決算書や帳簿などを確認しているため、顧問税理士であれば会社の財務状況を把握しているケースもあります。
M&Aを検討する段階で財務上の問題点を洗い出しておけば、後から問題が発覚するリスクを抑えることにもつながります。
事業承継税制について相談できる
親族や従業員などへ会社を引き継ぐ場合、一定の要件を満たすことで事業承継税制を利用できる場合があります。
事業承継税制は、非上場株式等を後継者が取得した際の贈与税・相続税について、一定の要件のもとで納税を猶予する制度です。
ただし、制度の利用にはさまざまな要件があり、適用後も一定の手続きや要件への対応が必要になります。
「事業承継税制を使えば必ず税金が安くなる」と考えるのではなく、自社が制度の対象となるのか、利用した場合にどのような手続きが必要になるのかなどを税理士に確認することが大切です。
承継後の経営まで考えたアドバイスを受けられる
事業承継では、「誰に会社を渡すか」だけでなく、「承継した後に会社をどう成長させていくか」も重要です。
税理士は会社の決算書や資金繰りなどを確認しながら、経営者の相談相手になることがあります。
例えば、
「後継者が経営しやすい財務状態にしておきたい」
「設備投資をする余力を残したい」
「借入金をどのように整理するか考えたい」
といった課題について、会計・税務の観点から相談できます。
特に事業承継を単なる「経営者の交代」と考えるのではなく、会社の将来を見据えた経営計画として考えることが重要です。
M&Aでは税理士以外の専門家との連携も重要
M&Aの場合、税理士だけですべての業務を完結できるとは限りません。
M&Aには、
- 買い手・売り手候補の探索
- 企業価値の評価
- 財務・税務上の調査
- 契約条件の交渉
- 株式譲渡契約などの契約書作成・確認
- クロージング手続き
など、さまざまな業務があります。
そのため、税理士に加えて、弁護士やM&Aアドバイザー、金融機関などが関わることもあります。
税理士は特に税務・会計面の専門家として重要な役割を担いますが、法務やM&A仲介などについては、それぞれの専門家に相談する必要があります。
事業承継やM&Aを税理士に相談するときの注意点
税理士なら誰に相談しても同じというわけではありません。
事業承継やM&Aを相談する場合には、次のようなポイントを確認しましょう。
事業承継やM&Aの経験があるか確認する
税理士にも得意分野があります。
法人の顧問業務を中心にしている税理士もいれば、相続税を専門としている税理士、M&Aや事業承継を得意としている税理士もいます。
そのため、依頼前には、
- 事業承継の相談実績
- M&Aに関する支援実績
- 自社と似た規模の会社への支援経験
- 株式評価や相続税に関する知識
- 他の専門家との連携体制
などを確認しておくとよいでしょう。
税務とM&Aの「売買価格」を混同しない
M&Aでは、「会社はいくらで売れるのか」という点が大きな関心事になります。
しかし、税務上の株式評価額と、実際のM&Aで成立する売買価格は同じとは限りません。
M&Aの価格は、会社の財務状況だけでなく、将来の収益性、事業の強み、顧客基盤、買い手とのシナジーなど、さまざまな要素によって決まります。
そのため、税理士から税務上の評価について説明を受けた場合でも、それをそのままM&Aの売却価格と考えないよう注意しましょう。
費用や業務範囲を事前に確認する
事業承継やM&Aの支援では、通常の顧問契約とは別に費用が発生する場合があります。
例えば、株式評価、事業承継計画の策定、デューデリジェンス、M&Aに関する税務相談など、依頼する業務によって料金体系が異なることがあります。
そのため、契約前に、
「どこまで対応してもらえるのか」
「通常の顧問料に含まれるのか」
「別途料金が発生する業務は何か」
を確認しておくことが大切です。
早い段階から相談する
事業承継やM&Aは、短期間ですべてを準備できるとは限りません。
特に親族や従業員への事業承継では、後継者の育成や株式の整理、会社の財務状況の改善など、時間をかけて検討したほうがよい問題もあります。
M&Aについても、会社の財務や契約関係を整理してから買い手候補を探すことで、スムーズに進められる可能性があります。
「まだ具体的に決まっていないから相談しない」のではなく、「将来的に事業を誰かへ引き継ぐ可能性がある」という段階から税理士に相談することも選択肢の一つです。
顧問税理士に相談するべき?専門税理士に相談するべき?
すでに顧問税理士がいる場合、まず現在の顧問税理士に相談する方法があります。
会社の経営状況や決算内容を継続的に見てもらっている税理士であれば、自社の状況を一から説明する必要がなく、これまでの経緯を踏まえて相談できるというメリットがあります。
一方で、現在の顧問税理士がM&Aや事業承継を専門としていない場合もあります。
その場合は、顧問税理士に加えて、事業承継やM&Aを専門とする税理士に相談する方法もあります。
例えば、
「顧問税理士には日常的な税務を依頼する」
「専門税理士にはM&Aや事業承継について相談する」
という形で役割を分けることも可能です。
重要なのは、現在の顧問税理士だけに限定するのではなく、自社が抱えている課題に合った専門家を選ぶことです。
税理士を選ぶときは「何を相談したいのか」を明確にする
事業承継やM&Aについて税理士を探す場合、最初に自分が何を相談したいのかを整理しておきましょう。
例えば、
「後継者に会社を引き継ぎたい」
「自社株式の評価について知りたい」
「相続税や贈与税について相談したい」
「会社を第三者へ売却したい」
「M&Aの税務について確認したい」
「事業承継後の経営計画について相談したい」
など、目的によって必要となる専門知識が異なります。
単に「M&Aに強い税理士」という条件だけで探すのではなく、自社が抱えている課題に近い経験を持つ税理士かどうかを確認するとよいでしょう。
まとめ
事業承継やM&Aは、会社の将来を大きく左右する重要な取り組みです。
税金や会計の問題を後回しにしてしまうと、後になって予想外の税負担が発生したり、承継方法の見直しが必要になったりする可能性があります。
税理士に相談することで、株式評価、税負担、財務状況、事業承継税制など、税務・会計面から事業承継やM&Aを検討できることが大きなメリットです。
一方で、すべての税理士がM&Aや事業承継を得意としているわけではありません。
依頼する際には、これまでの支援実績や専門分野、他の専門家との連携体制、費用や業務範囲などを確認しておきましょう。
また、M&Aでは税理士だけでなく、弁護士やM&Aアドバイザー、金融機関などの専門家が関わることもあります。
「会社をいつか誰かに引き継ぎたい」と考えているのであれば、実際の承継直前になってから動き始めるのではなく、早い段階から税理士に相談し、会社の財務や株式、税務上の課題を整理しておくことが、将来の選択肢を考えるうえで重要になります。
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