自社株の相続対策は税理士に相談すべき?株式評価と事業承継のポイントを解説
- 2026.09.27
- 税金・法律
会社を経営している人にとって、将来の相続を考える際に忘れてはいけないのが「自社株」の問題です。
特に中小企業の経営者の場合、会社の株式を本人がまとまって保有しているケースが多く、自社株の評価額が高くなっていると、相続時に多額の相続税が発生する可能性があります。
「会社の株は現金ではないのに、なぜ相続税がかかるの?」
「自社株の評価額を下げる方法はある?」
「子どもに会社を継がせたいが、相続税を払えるだけの現金がない」
「自社株の相続対策は税理士に相談したほうがいい?」
このような悩みを抱えている経営者も少なくありません。
自社株の相続対策では、単純に株式の評価額を下げるだけではなく、誰に会社を引き継ぐのか、いつ株式を移すのか、贈与と相続のどちらを選ぶのかまで含めて考える必要があります。
また、一定の要件を満たせば「法人版事業承継税制」を利用し、自社株にかかる相続税の納税を猶予してもらえる可能性もあります。
そのため、自社株の相続対策は、相続税だけでなく法人税や株式評価、事業承継まで幅広く対応できる税理士に早めに相談することが重要です。
- 1. なぜ自社株に相続税がかかるの?
- 2. 自社株の相続税評価額はどうやって決まる?
- 3. 自社株の評価額が高い会社は早めの相続対策が重要
- 4. 自社株の相続対策として考えられる方法
- 5. 事業承継税制は自社株の相続対策で重要な選択肢
- 6. 自社株の相続対策では「株価を下げる」ことだけを考えない
- 7. 自社株の相続対策で税理士に相談するメリット
- 8. 自社株の相続対策では「納税資金」も考える
- 9. 自社株を複数の相続人に分けるのは慎重に
- 10. 自社株の相続対策は早いほど選択肢が増える
- 11. 自社株の相続対策を税理士に相談するタイミング
- 12. 自社株の相続対策を依頼する税理士の選び方
- 13. 自社株の相続対策は「株価が高くなってから」では遅い
- 14. 自社株の相続対策を税理士に相談するときに準備するもの
- 15. 自社株の相続対策は税理士に早めに相談しよう
- 16. まとめ
なぜ自社株に相続税がかかるの?
「自分が経営している会社の株式なのだから、会社を子どもに継がせても税金はかからないのでは?」と考える人もいるでしょう。
しかし、自社株も経営者個人が保有している財産の一つです。
経営者が亡くなり、その自社株を相続人が取得すれば、原則として相続財産として評価され、相続税の課税対象になります。
特に問題になりやすいのが、会社の業績が好調で、長年利益を積み上げてきたケースです。
例えば、会社そのものは中小企業でも、
- 利益が長年蓄積されている
- 現預金を多く保有している
- 土地や建物などの資産を所有している
- 業績が好調で利益が増えている
- 過去に自社株の相続対策をしていない
といった場合、自社株の評価額が高額になっている可能性があります。
相続人からすると「会社を引き継いだだけなのに、相続税を現金で支払わなければならない」という状況になることもあります。
これが、自社株の相続対策が重要になる大きな理由です。
自社株の相続税評価額はどうやって決まる?
上場企業の株式であれば、株式市場で公表されている株価をもとに評価できます。
一方、中小企業の自社株は、通常、証券取引所に上場されていません。
このような「取引相場のない株式」については、相続税・贈与税の計算上、一定のルールに基づいて評価します。国税庁では、株主の区分や会社の規模などに応じて、原則的評価方式や配当還元方式によって評価する仕組みを定めています。
会社の規模などによって、
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
- 類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
- 配当還元方式
などの方法が使われます。
例えば、大会社では原則として類似業種比準方式、小会社では原則として純資産価額方式、中会社では両者を併用して評価します。
つまり、自社株の相続対策を考えるためには、まず「自社株がいくらとして評価されるのか」を正確に把握することが重要です。
自社株の評価額が高い会社は早めの相続対策が重要
自社株の相続対策を考えるうえで注意したいのが、「会社の業績が良いから問題ない」とは限らないことです。
会社の利益が増え、純資産が積み上がれば、自社株の評価額が上昇する可能性があります。
例えば、
「会社の売上が伸びている」
「利益が過去最高になった」
「現預金がかなり増えた」
という会社は、経営上は好ましい状態です。
しかし、相続という観点から見ると、自社株の評価額が高くなっている可能性があります。
さらに、相続が発生してから「自社株の評価額が数億円だった」と判明すると、相続税の納税資金を準備できないという問題につながることがあります。
そのため、相続対策は相続が発生してから始めるのではなく、経営者が元気なうちから準備しておくことが重要です。
自社株の相続対策として考えられる方法
自社株の相続対策には、会社の状況や後継者によってさまざまな方法があります。
代表的なものとしては、次のような方法が考えられます。
自社株の評価額を確認する
まず最初に行いたいのが、自社株の評価額を把握することです。
「自社株は昔から持っているから、価値もそれほど変わっていないだろう」と考えるのは危険です。
会社の利益や純資産、会社規模などによって評価額は変わるため、現在の株価を税理士に試算してもらいましょう。
国税庁も、取引相場のない株式を相続・贈与した場合の評価に使用する「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」を公表しています。
生前贈与を検討する
後継者が決まっている場合には、経営者が生きている間に自社株を後継者へ贈与する方法もあります。
ただし、株式を贈与すれば必ず税負担がなくなるわけではありません。
贈与税が発生する可能性があるため、相続した場合と比較しながら検討する必要があります。
また、会社の業績が今後さらに伸びると予想される場合には、株価が上昇する前に株式を移転することが有利になるケースもあります。
一方で、贈与を急ぐことで別の問題が生じることもあるため、税理士にシミュレーションしてもらうことが重要です。
事業承継税制を利用する
後継者へ自社株を引き継ぐ場合には、「法人版事業承継税制」も重要な選択肢です。
法人版事業承継税制では、一定の要件を満たした後継者が非上場株式等を相続・遺贈によって取得した場合、その株式に対応する相続税について納税を猶予し、一定の要件を満たした場合には免除される仕組みがあります。
これは、自社株の相続対策を考える経営者にとって非常に重要な制度です。
ただし、単純に「事業承継税制を使えば相続税がゼロになる」という制度ではありません。
適用にはさまざまな要件があり、制度利用後も継続的な手続きが必要です。
事業承継税制は自社株の相続対策で重要な選択肢
法人版事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」があります。
特例措置は、一定の要件を満たすことで、非上場株式等に対応する相続税について納税猶予を受けられる制度です。
2026年現在、特例措置は2027年12月31日までに行われる一定の贈与・相続等が対象となる時限措置です。国税庁も令和8年分の相続税について特例措置の適用要件や提出書類を公表しています。
また、特例措置を利用する場合には、特例承継計画などの準備も必要になります。
そのため、
「相続が発生したら税理士に相談しよう」
では遅い場合があります。
後継者への自社株の承継を考え始めた段階で、事業承継税制を利用できるか確認しておくことが重要です。
自社株の相続対策では「株価を下げる」ことだけを考えない
「自社株の相続対策」と聞くと、「株価を下げる方法」をイメージする人もいるでしょう。
確かに、一定の方法によって自社株の評価額が下がれば、相続税の負担軽減につながる可能性があります。
しかし、単純に株価を下げればよいというものではありません。
例えば、会社の利益を意図的に減らすために無理な経費支出を行えば、会社の資金繰りや経営状態を悪化させる可能性があります。
また、不要な不動産や資産を購入するなど、税金だけを目的とした対策にも慎重な判断が必要です。
重要なのは、
「会社の経営を健全に維持しながら、適正な方法で自社株の評価と相続税負担を考える」
ことです。
税理士に相談する場合も、「株価を下げたい」とだけ伝えるのではなく、「会社を将来どのように承継したいのか」まで伝えるとよいでしょう。
自社株の相続対策で税理士に相談するメリット
自社株の相続対策は、一般的な個人の相続対策と比べて専門性が高い分野です。
税理士に相談する大きなメリットは、会社と経営者個人の両方を見ながら対策を考えられることです。
具体的には、次のような相談ができます。
- 現在の自社株評価額の算定
- 将来の株価のシミュレーション
- 相続税額の試算
- 贈与税額の試算
- 生前贈与と相続の比較
- 事業承継税制を利用できるかの確認
- 後継者への株式移転方法の検討
- 相続税の納税資金対策
- 他の相続人との財産配分の検討
- 相続税・贈与税の申告
特に重要なのが、「現在の税額」だけではなく「将来の税負担」までシミュレーションすることです。
現在の自社株評価額が1億円だったとしても、会社の業績が伸びれば数年後には評価額が大きく変わる可能性があります。
反対に、業績が悪化すれば評価額が下がることもあります。
将来の経営計画まで考慮して株式の承継時期を検討することが重要です。
自社株の相続対策では「納税資金」も考える
自社株の相続で見落とされやすいのが、相続税を支払うための現金です。
自社株を1億円相続したとしても、その1億円がそのまま現金として手元に入ってくるわけではありません。
会社の株式を取得しただけであれば、相続人が自由に使える現金が増えるわけではありません。
それにもかかわらず、相続税は原則として金銭で納付する必要があります。
そのため、
「自社株は後継者に渡せたが、相続税を払う現金がない」
という問題が起こる可能性があります。
そこで、
- 預貯金などの相続財産をどのように配分するか
- 生命保険をどのように活用するか
- 会社からの役員退職金などをどう考えるか
- 自社株をどの程度後継者に集中させるか
- 納税猶予制度を利用できるか
などを事前に検討します。
自社株の相続対策では、株価だけでなく「納税資金」まで含めて考えることが大切です。
自社株を複数の相続人に分けるのは慎重に
経営者の相続では、「子どもが複数いるから、自社株も平等に分けよう」と考えることがあります。
しかし、会社経営という観点から見ると、自社株を複数の相続人に分散させることが必ずしも適切とは限りません。
例えば、長男が会社を継ぐ一方で、次男や長女も自社株を取得すると、会社の議決権が分散する可能性があります。
将来的に、
「経営方針について意見が対立する」
「株主間で話がまとまらない」
「後継者が経営権を十分に確保できない」
といった問題につながることも考えられます。
そのため、相続人間の公平だけでなく、会社経営の安定性も考えて自社株の承継方法を決めることが重要です。
自社株の相続対策は早いほど選択肢が増える
自社株の相続対策を早く始める最大のメリットは、選択肢を増やせることです。
例えば、まだ相続まで時間があるのであれば、
「生前贈与」
「事業承継税制」
「株価のシミュレーション」
「納税資金の準備」
「後継者の選定」
などを組み合わせて検討できます。
一方、経営者が高齢になってから突然相続対策を始めると、株式を贈与する時間が十分に確保できなかったり、後継者の準備が間に合わなかったりする可能性があります。
特に事業承継税制を利用する場合には、株式を移転する前から準備が必要となるため、早めの相談が重要です。
自社株の相続対策を税理士に相談するタイミング
では、いつ税理士に相談すればよいのでしょうか。
基本的には、「まだ相続の予定はない」という段階でも問題ありません。
例えば、
- 経営者が60歳を超えた
- 子どもに会社を継がせたいと考えている
- 後継者候補が決まった
- 会社の利益が大きく増えた
- 会社の内部留保が増えている
- 自社株の評価額が気になっている
- 過去に自社株を贈与したことがある
- 相続人が複数いる
- 会社をM&Aする可能性もある
このような場合には、一度税理士に相談しておくとよいでしょう。
特におすすめなのは、「自社株がいくらになるのか知りたい」という段階で相談することです。
具体的な相続対策を決める前に現在の株価を把握しておけば、その後の選択肢を検討しやすくなります。
自社株の相続対策を依頼する税理士の選び方
自社株の相続対策を相談するなら、単に「法人税に詳しい税理士」を選ぶだけではなく、相続税や事業承継にも詳しい税理士を選ぶことが重要です。
非上場株式の評価に詳しい
まず確認したいのが、自社株の評価経験です。
非上場株式は、会社の規模や株主構成などによって評価方法が異なります。
そのため、相続税申告だけでなく、非上場株式の評価や事業承継に対応した実績がある税理士を選ぶと安心です。
相続税・贈与税にも詳しい
自社株を後継者に移す場合、相続税だけでなく贈与税も関係してきます。
「贈与した場合」と「相続した場合」の税額を比較し、家族全体の財産状況まで考慮して判断する必要があります。
そのため、法人税だけでなく、相続税・贈与税まで幅広く相談できる税理士が適しています。
事業承継税制に対応できる
自社株の相続対策では、法人版事業承継税制が重要な選択肢になる場合があります。
そのため、事業承継税制について、
「利用できるか」
「どのような手続きが必要か」
「制度を利用した場合のメリット・デメリットは何か」
まで説明できる税理士を選びましょう。
税金だけでなく会社の将来まで考えてくれる
理想的なのは、税金だけではなく会社の将来まで考えてくれる税理士です。
自社株の相続対策では、
「誰に会社を継がせるのか」
「後継者にどの程度の株式を持たせるのか」
「相続人間の財産配分をどうするのか」
「今後会社を成長させるのか、M&Aを検討するのか」
など、さまざまな問題を考える必要があります。
税負担だけを見て判断するのではなく、会社の将来像を踏まえて複数の選択肢を提示してくれる税理士を選ぶことが重要です。
自社株の相続対策は「株価が高くなってから」では遅い
自社株の相続対策では、株価が高くなってから対策を始めるよりも、早い段階から準備しておくほうが有利な場合があります。
特に会社が成長している場合、
「今期も利益が増えた」
「純資産が大きく増えた」
「会社の所有する不動産の価値が上がった」
などの事情によって、自社株の評価額が上昇する可能性があります。
実際に、国税庁では2026年に「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」を開催しており、現在の評価制度についても検討が行われています。
したがって、今後の制度改正などにも注意しながら、現在のルールに基づいて自社株の評価と相続対策を確認しておくことが大切です。
自社株の相続対策を税理士に相談するときに準備するもの
初めて税理士へ相談する場合、次のような資料があるとスムーズです。
- 直近数年分の決算書
- 法人税申告書
- 株主名簿
- 会社の定款
- 登記簿謄本
- 会社が所有する不動産の資料
- 借入金の資料
- 過去の株式贈与・譲渡に関する資料
- 経営者個人の財産状況が分かる資料
- 相続人・後継者候補に関する情報
もちろん、最初からすべてを揃える必要はありません。
「子どもに会社を継がせたい」
「自社株の価値がどれくらいあるか知りたい」
「相続税がいくらになるのか不安」
という程度の相談から始めてもよいでしょう。
税理士に現在の状況を伝えれば、必要な資料や今後確認すべき事項を案内してもらえます。
自社株の相続対策は税理士に早めに相談しよう
自社株は、経営者にとって単なる財産ではありません。
会社の経営権そのものに関わる重要な資産です。
そのため、自社株の相続対策では「相続税をいくら減らせるか」だけを考えるのではなく、
「誰が会社を引き継ぐのか」
「どのように株式を移すのか」
「後継者に経営権を集中させるのか」
「他の相続人にはどの財産を渡すのか」
「相続税を支払う資金をどう準備するのか」
まで含めて検討する必要があります。
特に非上場株式は、一般の人が自分で正確に評価することが難しい財産です。
国税庁のルールでも、株主の区分や会社規模などに応じて評価方法が変わるため、単純に「会社の資本金=自社株の価値」というわけではありません。
また、後継者への承継を考える場合には、法人版事業承継税制によって相続税の納税猶予を受けられる可能性もあります。
そのため、自社株の相続対策を考えるなら、まず税理士に現在の株式評価額を確認してもらい、そのうえで贈与・相続・事業承継税制などを比較することをおすすめします。
まとめ
自社株は、経営者が亡くなった際に相続財産として評価され、相続税の課税対象になる可能性があります。
特に、会社の利益や純資産が長年積み上がっている企業では、自社株の評価額が想像以上に高くなっているケースもあります。
自社株の相続対策では、まず現在の株式評価額を把握することが重要です。
そのうえで、
- 自社株の評価額を確認する
- 生前贈与を検討する
- 相続税の納税資金を準備する
- 後継者への株式集中を検討する
- 法人版事業承継税制を検討する
- 相続人全体の財産配分を考える
といった対策を、会社の状況に合わせて組み合わせていくことが大切です。
特に重要なのは、「相続が発生してから税理士に相談する」のではなく、事業承継を意識した段階で税理士に相談することです。
早めに相談しておけば、自社株の評価額を確認したうえで、生前贈与や事業承継税制、納税資金の準備など、複数の選択肢を比較できます。
自社株の相続対策は、単なる相続税対策ではありません。
会社の経営権を誰に引き継ぎ、これまで築いてきた事業を次の世代へどう残していくのかという「事業承継」の問題でもあります。
だからこそ、非上場株式の評価・相続税・贈与税・事業承継税制のすべてを横断して相談できる税理士を早めに見つけ、会社と家族の双方にとって納得できる承継方法を検討していくことが重要です。
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