遺産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討
- 2023.11.15
- 税金・法律
令和2年12月10日に公表された「令和3年度税制改正大綱」では、次のように相続税・贈与税の一体課税を今後の税制改正で検討することとしています。
毎年、暦年贈与を繰り返す対策を問題視
財務省は政府税制調査会で検討を行う際に、高額の財産を子や孫などに贈与を毎年繰り返して行なう、いわゆる連年贈与の資料を提出しました。
その資料によると、受贈者の年齢層が低いほど連年贈与が繰り返されていることが報告されています。
現行の暦年贈与の制度は、110万円の基礎控除と10%~55%の累進税率で課税されています。
相続の際に最高税率である55%で課税される人にとっては、毎年贈与を繰り返すと低い贈与税率が適用され税金が安く済むため、多くの方がこの連年贈与を税務対策として実行しているわけです。
アメリカ・ドイツ・フランスでは贈与税と相続税は一体課税
アメリカでは、贈与税と日本の相続税にあたる遺産税は一体化されており、一生涯の贈与額と相続財産に対して一体的に課税されています。
ドイツとフランスでも贈与税と相続税は統合されており、ドイツは生前の10年分の贈与財産を、フランスは生前の15年分の贈与財産を相続財産に加算して一体的に課税されています。
これに対して、日本ではご存知のように暦年課税の場合、贈与税に110万円の基礎控除が毎年あり、相続前3年間の贈与のみが相続で財産を取得した人の相続財産に加算されます。
60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の直系卑属である推定相続人または孫に対する贈与に限り、選択によって相続時精算課税の適用を受けることができます。
一体課税になるのは、早くても令和4年度以降の税制改正か?
このように相続税と贈与税の一体課税が実施されると、贈与による税務効果は、①収益を生み出す株式や不動産等の贈与による受取利息・配当や受取地代・家賃などの贈与税非課税での取得と、②受贈財産を受け取った後の価値上昇分しかなくなります。
今後は、次のような点をどうするのか慎重に検討するものと思われます。
- 相続時精算課税は、「60歳以上の父母または祖父母から20歳以上の直系卑属である推定相続人または孫に対する贈与」に限定されているが、その範囲をどうするか
- 暦年課税を廃止する場合は、110万円の基礎控除も一切廃止するのか
- これまでの贈与は対象とせず、改正後の贈与のみを一体課税の対象とするのか
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